ばいがえし…

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復讐の
哀しき連鎖……
「倍返し」


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大衆言葉(流行語)ってのは、流動的に変動します。


例えば。
「いつヤるの?今でしょ!」が流行ったかと思えば。
あまちゃん』ブーム、猫も杓子も「じぇじぇじぇ!?」。
……、で。
此処に来て、注目度急上昇な言葉が「倍返し」。


……とは、云うモノ。
どうせ、流行語大賞は『アベノミクス』が獲るのでしょうけれど。(笑)
安倍総理が受賞を辞退しなければ、の、話。


ともあれ、『半沢直樹』は面白いですよ。
ただ、正直な感想としては。
復讐劇のカタルシスとしては、NHKの『ハゲタカ』の方が圧倒的に面白かったのですが。
……あくまで、個人的な主観の感想なので、その辺については言及しません。


それは、それとして。


ドラマの面白さ、とは、裏腹に。


「倍返し」。


この言葉のインパクト、と、ドラマの人気『だけ』が軽々に注目されて。
なんつーか、どう説明すれば良いのか難しいのですが。
「報復肯定のカタルシス、と、ドラマツルギーの美化」が、ものすごく、危険に感じます。


簡単に説明すると。


例えば、ある中学校で。
同級生(b)が同級生(a)を金属バットで殴り殺すと云う、ショッキングな事件が発生したとします。
(クライム・フィクションとして。)
……、で。
……殺した同級生(b)の、動機の供述によると。
……殺された少年(a)から、いつも、殴る蹴るなどの暴行を日常的に受けていた、とかで。
……「だから『倍返し』のつもりで、バットで殴ったら、死んだ」。


みたいな。
そう云うトリガーが、今。
世の中に、当然の如く、蔓延していて。
いつ、上記のクライム・フィクションと似た様な現実が発生しそうな雰囲気が漂っているのですが。


相変わらず、発想が、荒唐無稽ですか?
いつもながらの、ボクの悪癖の、暴論ですか?
デタラメの、繊細な、過度の心配所だと笑いますか?


では。
まるで、刑事ドラマみたいな、夫婦の不仲がトリガーとなった、マグカップ撲殺事件。
あの出来事を、アナタは、どう解釈しますか?


ね?


『相棒』などの刑事ドラマが、あの現実の事件のトリガーとなった、とは、決して言いません。
……けれど。
……刑事ドラマで頻繁に観るシチュエーションが、現実化しているんです。


半沢直樹』の云う「倍返し」は、決して、暴力を暴力で返す発想では無いです。
(暴力による暴力の「倍返し」は、いわゆる「北野ブルー」に類する北野武監督の映画。)
半沢直樹』がトリガーとなって、いじめ報復の逆襲殺人が起こるワケが無いです。
……でも。
……それとは、まったく、別角度から。
……「復讐するは我に在り」の刺激と、美学の、娯楽化。
……それが、巡り巡って、形を変えて。
……「目をヤられたら、目と歯を奪え」的な、報復の連鎖の正当視に繋がりはしないだろうか、と。


ただ、単純に「倍返し」と云う単語の持つインパクト、と。
半沢直樹』の愉悦のドラマツルギーに対するカタルシス、と。
その二点だけを軽く考えて、本質を考えない人々が、表層的な部分だけを受け取って。


『ヤられたら、ヤり返す』って、カッコイイ、……だけが、痛烈に前頭葉に刻まれて。
浅はかな行動原理で、直情的に、それを具現化させるヒトが現れたりしないだろうか、……と。


ただただ。
それが、不安です。
復讐が殺人事件の動機として挙げられ、「倍返し」の発想に背中を押されて実行に踏み切った。
……そんな、過度の心配性が仮説する被害想定が、実際に、現実になってしまいそうな。
……人間の心の渇望、と、疲弊(壊死)が、とても、とても心配です。


目をヤられたら、目をヤり返すだけで我慢。
歯をヤられたら、歯をヤり返すだけで我慢。
……なんて、『ハムラビ法典』を逆手に茶化すつもりは無いですが。


「復讐の連鎖は、誰にとっても、悲劇でしかない。」、と。
……その、たった一文一節を、まったく誰も気に留めていない世の中の激流が。
……なんだか、すごく、物騒です。
……また、人が人を簡単に殺すに至る契機のトリガーが仕掛けられた様な気がして、さ。