えむえむ…

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※ : 本日は、著名人の訃報を伴う内容につき、575は自粛とさせて頂きます。


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ゼロの使い魔』の作者、ヤマグチノボル氏の、急逝の一報。
何度もアニメ化された兼ね合いもあって、方々で、小さな波紋が広がりつつあります。
アニメを機に作品を知り、ライトノベル文化にハマるキッカケになった、とか。
アニメになる前から好きで、アニメ化を我が事の様に喜んだ、とか。
アニメしか見てないけど、アニメは好きだった、とか。


もちろん。
インターネットの世界は、匿名性の弊害により、狼藉や中傷を振り撒くヒトも居るワケで。
死人にツバを嗾ける、そんな感じの悪辣も、所々に見受けられますが。


ボクが、フッと、思ったのは。
二年前の、四月。
松野秋鳴さんの急逝の一報、でした。


えむえむっ!』と『ゼロの使い魔』を。
両天秤に掛けて、同格に考える、……と云うのも、難しいのですけれど。
この際、平成のライトノベルとして、一つ括りに考えるコトにします。


アレですよ。
例えば、声優さんの例で云えば。
直近の訃報で云えば、本多知恵子さん、と、納谷悟朗さん、の、訃報。
納谷さんの80年の生涯、と、本多さんの40余年の生涯、と。
それを両天秤に掛けて考えよう、みたいな、無理難題みたいな物です。
人間の生命とは、斯くも残酷に、全ての人々に於いて哲学的に平等なのです。
(文化功労、経済事情、宗教、などなど、現実的に考えると、個々の生命の格差は甚大ですけれど。)


突き抜けて、極論。


此処までの話を、要約すると。
前述、納谷吾郎さん、と、ヤマグチノボルさん、の、死生は。
当代(先代)市川團十郎さん、元横綱大鵬関、マーガレット・サッチャー元英国首相、と。
そして他ならぬ、コレを読んでいるアナタと、コレを書いている私と。
哲学的には、全ての価値が、イコールで釣り合う等格の意義を持つのです。


何だろうね。
福沢諭吉とか、宮沢賢治とか、その辺の文学を敬愛する書生の考え方だわね。(苦笑)
現実問題、全ての生命の価値は、それぞれが完全に一致しないからこそ意義があるのですが。
それはそれで、どんどん話が面倒な方向へと逸れて行きそうなので。
単純性善説として「人間、皆、平等。」と云う事で、開き直ります。


ともあれ。


懸命、……なんて言葉が、ありますが。
命を、懸ける。
(いっそ「賭ける」なんて当て字でも、意味は罷り通る気もしつつ。)


若き文星の訃報のニュースを考えながら。
他方、村上春樹さんの最新作の話題を見ていると。
なんつーか。
商業作家として、例え、出版社の意に逆らえぬ、子飼いの下請けライトノベル作家であっても。
その本懐は、二つ。
「自分の主義信条や世界観を『娯楽』として具現化し、商品化する。」
「自分の芸才で、誰かしらを幸運に……とまでは行かずとも、せめて笑顔にする。」
……だろう、と、考えても、スジ違いでは無いと思うのですが。
(ホラー、サスペンス、ミステリー、などは『笑顔』のニュアンスに微妙な齟齬がありますが。)
(「愉悦や快楽にも似た、恐怖や興奮や刺激を与える」と云う意味で『笑顔』と表現します。)


もし、文学の神さま、……なんてのが居たとして。
(詩人に才を与える代償として、薄命を強要するリャナンシー、みたいな。)


薄命に散った文星、と、現世で次作を創造し続ける文豪、と。
その天運の差、……ってのは。
どんな基準を以ってして、生命の天秤を振り分けているのかなぁ、と。


無神論の立場から、短命と長寿の文学家を講じるならば。
ほぼ、大半の薄命の文学家にとって「死神の鎌」となるのは、要するに、ストレスであり。
身に余る光栄と重圧に、心を押し潰されて。
「それこそが、短命の原因だ」と分析しても、たぶん、バチは当たらないと思うのですが。
……逆に云えば、文学家にして長寿を誇るヒト、と云うのは。
……如何に器用に、ストレスから心を避難させる術に長けているか、と云う事だと思うのですが。


歴史に名を残す大器について、ボクの様な一介の市民が講じるのはナンセンスなので。
それでも、ライトノベル等の「文学」を生業として、この時代を生きようと志す、若者へ。
アニメーション専門学校のライトノベル学科の講師、などなど。
「文学で生計を立てたいと願う若者を、現実的に『就労』させる企業」の教育責任として。


真に、書生に対して、まず第一に教えるべきは。
大切なのは『懸命』では無く『健命』である、……と。


懸命。
命を懸けて(賭けて)、心身を削り、自作が世に知れ渡り。
薄命に散り、多くの読者に悲観を齎すのか。


健命。
なかなか、自作が世に認められずとも、焦るコト無く、病むコト無く。
健朗に、まずは一人でも多くのファンの人々に、確たる『笑顔』を提供し続けるか。


……商業作家として、読者に対して、どの様な「制作者責任」を負うか。
……それをプロとして自考できるだけの、ポリシー、と、アイデンティティ


悔しくも薄命に散り、自作の愛読者に悲観を強要してしまった、文星の先達の生き様を。
「羨ましい」と、見るか。
「こうは、成るまい」と、見るか。
招来、文芸で生計を立てようと大志を抱く、書生、各位。
貴方は、そこまで、真剣に考えているか?


真剣に考える、……って、何を?
自分の、生命を。