らぴゅたぱん…

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目玉焼き
一つを二人で
分かつ喜び


字あまり。


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「40秒で支度しなッ!」


……おっと、失敬失敬。


名式名称は、知らないんですが。
俗称「ラピュタ飯」だか「ラピュタパン」だか。
身も蓋も無い言い方をすると、要するに、目玉焼き乗せトースト。


そんな、話を。
ここ数日の間に、職場と、楽団と、そこかしこで立て続けに耳にしました。
かねてより、オンラインでは、細々と注目されていたみたいですが。


おさらい。
ラピュタ飯」(ラピュタパン)。


材料。(2人分)
・食パン。(1枚)
・たまご。(1個)


作り方。


・食パンを、フライパンで、トーストする。
(フライパンでトーストせず、トースターを使った場合は「ラピュタ飯」では無い。)


・同じフライパンで、目玉焼きを作る。
(塩、胡椒、など、見た目を左右しない調味料で味を調える。)
(マヨネーズ、ケチャップ、ソース、醤油、チーズ、などを使った場合は「ラピュタ飯」では無い。)


「はい、できましたー♪」


……まぁ、『今日の料理ビギナーズ』を、知らなくとも。
……『天空の城ラピュタ』を知ってるヒトなら、説明するまでも無いですが。(笑)


・一枚のトースト、一個の目玉焼き、を、二人で半分に分ける。
・基本、味付けに関する描写は、無い。
(文脈や幕間を察して、カメラの死角で塩や胡椒で味付けしたのかなって補完も考えられる。)
(見た目に影響を及ぼす調味料を使っては、ダメ。)


ベーコンやハム、バター(マーガリン)、マヨネーズ、などなど。
目玉焼きの下には、見えてないけど、レタスやチーズが乗っていたりするのかしら、とか。
作るシーンと食べるシーンが印象的な割りに、仔細が、良く分からないので。
我流レシピによる再現が、そこかしこで見られるワケなのですが。


具体的な料理手法の話、では無く。
その他の部分で、ちょっと、気になった、一般的解釈の微妙な齟齬、と、誤解。


「40秒で支度しなッ!」


この、台詞。
ドーラ一家が、パズーの家に強襲して、パズーを拉致緊縛して。
シータの不在に不穏の気を察しつつ、飛行戦艦ゴリアテの襲来を傍受して。
すわ、シータをムスカの手から奪還するに至る作戦会議を練る、談。


ええ。
ラピュタ飯」とは、まったく、何の関係も無いシーンの台詞、なのですが。


なのですが。
何を、どう、混線解釈したのか。
ラピュタ飯」ってのは、40秒で準備が出来る早飯である、みたいな。
……そんな感じの誤認識、が、幅広く、世間に浸透しているのが、気になりました。


目算。
目玉焼きを、二等分できるぐらいの硬さにまで、焼き上げるには。
どんなに少なく見積もっても、100秒ぐらいは掛かるのです。
その前に、フライパンでトーストを焼いているのだから、実際には180秒以上の時間は要します。


それを。
「無理は承知で、40秒で作るコト」に、アニメ補正を踏まえたロマンがある、みたいな。
実際には180秒ぐらい掛かっても『40秒で支度する』心意気こそが大切なのだ、みたいな。


ィャ、あのさ。
ラピュタ飯」を作る談には、40秒の制限によるドラマツルギーは、何も無いぞ?
今日一日の予定を、汎然と、呑気に考えていたですよ。
そしたら、唐突に、不意に。
ドーラ一家がパズー宅に来て、慌ててカバンに押し込んで、家を飛び出して。
……そして、そこから、あの、壮大なストーリーが始まるワケですが。


ラピュタ飯」が、たぶん、美味しいだろうなーと思わせるのは。
思春期のボーイ・ミーツ・ガールの、淡い、詩的な恋愛補正が、魅力を倍化させるからであって。
……なんつーか。
……『天空の城ラピュタ』に想いを馳せながら、一人で、もそもそ食べても。
……ただの、普通の、目玉焼きトーストの味しかしないぞ?


ええ、コレについては、言い切ります。
実際、触発されて、ボクも、やってみたからなっ!!(ぇ?)


その味気の無さ、を、どうにか工面するために。
マヨネーズとか、ケチャップとか、チーズとか、ベーコンとか、レタスとか。
パズーが作ったオリジナルレシピを軸に、自分好みの別物を作った、と、しても。
決して「ラピュタ飯」には、ならなかったよ……。


ィャ、目玉焼きトーストとしては、地味に美味いです。
べつに、飛空石(飛行石?)が満天に煌めく、洞窟の中で食べなくても。
近所の公園で食っても、相応、コンビニの惣菜パンより美味かったです。
天空の城ラピュタ』の想い出補正を加味して喰うと、なかなか、乙にして粋です。
個々其々の、自前の「オレ流・ラピュタ飯」を否定する気は、無いです。


ただ。
ただ、ね。


パズーとシータが分かち合った、あのロマンを期待して、食ってみて。
「……何だ、コレ」って、肩透かし、の、期待ハズレ。
あの、何とも云えない、気恥ずかしさ、虚しさ。
……その「くすぐったさ」こそが、「ラピュタ飯」の最大の醍醐味だと感じたさ。


それぐらい、深いぞ。
ラピュタ飯」は。
ただの、普通の、目玉焼きトーストなのに。


料理の決め手は、愛のサジ加減、……とか。
そんな妄言の都市伝説が、実際に、存在するのだとしたら。
ラピュタ飯」の味の決め手となるのは、作品に対する愛のサジ加減だろうなぁ、とか。


ちなみに。
どっかのコンビニが、然も、「ラピュタ飯」ブームの尻馬に乗ろうと。
目玉焼きトーストを、これ見よがしに売っていたですが。
量産小麦、と、強制飼育の鶏卵、と、化学調味料、の、味気無いモノでした。
まだ『天空の城ラピュタ』と露骨にタイアップしていないだけ、良心的と好意解釈すべきか。
それとも。
ロマンを知らない無粋な商売が、また一つ、子供の夢を踏み潰したと幻滅するか。
……なかなか判断が難しい、しかし、面白味も素っ気も何も無い、典型的なコンビニ飯でした。