ぶたたま…

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目分量
プロより旨い
母の味


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京都では葵祭の季節、ヨーグルトの日。
ローマ神話の商売と錬金術の神様、メリクリウスの日。


小早川凛子より華奢な体躯で、高嶺愛花を超える大食漢。
妖狐×僕SS』のガシャドクロ、髏々宮カルタの誕生日。


商売と錬金術の道理が罷り通らぬ、食道楽の奥の深さ、……の、話。


<今日の料理>


今さら、改めて「関西風お好み焼き」の作り方。
俗に言う、豚玉。


ィャ、まぁ。
ホットケーキやプリン、炒飯や餃子、酢豚やレバニラ、などなど。
たまーに、スタンダードなレシピを、がっつり特集するコトは有りますケドね。


「こう、片面を焼き終えて、ひっくり返した時に、ヘラでギューってしたくなりますよね」
「そうですね。その時のジューと云う香ばしい音が、また、食欲をそそるんですよね」
「……でも、それは、やっちゃダメなんです」
「……ダメなんですかっ!?」
「こう、ヘラの脇(エッジ)で、トントントンって軽く叩いて、形を整えるんです」
「『押し付ける』では無く『軽く、叩く』ですか?」
「そうすると、中の空気が逃げないから、ふっくら焼き上がるんですよ」
「なるほど。それが、お好み焼きの本場の大阪流なんですね」
「いや、そんな難しい話でも無いですよ(笑)」
「……そうですか?」
「使ってる肉が、ギュー(牛)じゃなくて豚(トン)やから。……すんません。(笑)」
「上手いッ!(笑)」


……。
……ええ、まぁ。
……『今日の料理』では、侭、こうしたダジャレが不意に飛び出すワケですが。(笑)


ともあれ。
別段、特筆すべき「特殊な作法」については言及されなかった『関西風お好み焼き』。
ネットで調べればスッと辿り着く様な、平均的で典型的な、スタンダードな作り方。


ツナギには山芋を使い、逆に、ベーキングパウダーは使わなかったり。
薄力粉を溶く「出汁」は、鰹と昆布の普通の「一番出汁」だったり。
キャベツ、紅ショウガ、桜エビ、天カス、……の他に、竹輪を混ぜてみたり。
(この「竹輪」は「コンニャクと牛スジ」や「イカ」などにアレンジが可能。)
※ : この辺りの、材料の差分の融通こそが『関西風お好み焼き』の奥の深さ。


卵の溶き方、生地のなめらかさ、焼き加減。
「ギュー、じゃなくて、トントン」以外は、至極、普通の『関西風お好み焼き』。


……なのですが。
……作り方や材料よりも、何よりも。
……今回は、家庭で作る「お好み焼き」に特化する、とかで。
……その辺の、家庭で作るためのコツだか作法だか、が、実に面白かった、でした。


「そもそも。ご家庭の皆さんが、僕等みたいにプロの味を出そうと思っても無理なんですよ」
「プロらしい、厳しい御意見ですね」
「ただ、ね。皆さんのお母ちゃん、お父ちゃんが作ってくれた『お好み焼き』を思い出して下さい」
「親に作ってもらったお好み焼き、……ですか?」
不思議と、店屋物や夜店より、ウチのが美味しいと感じた事は無いですか?
「ああ、いわゆる『お袋の味』と云う奴ですね」
「今日、皆さんに御紹介したいのは、それです。プロより美味しく作るコツ。(笑)」


要点、まとめ。
大阪のお母ちゃんが作る、プロより美味しい『関西風お好み焼き』のコツ。


・いちいち、分量を、杓子定規に量らない。目分量で、ざっくり。
「お母ちゃん、お好み焼きを作るのに、いちいち、秤とか使わんでしょう?
お父ちゃんや子供が、お腹を空かせて待ってるから、パッパッと作るでしょう?
あの、手際の良さ。
分量の正確性よりも何よりも、そこが、意外と重要なポイント」


・材料の加減と工面は、自分の家の都合を最優先。
「今日は、ツナギに、ベーキングパウダーを使わず山芋を使いましたけど。
べつに、わざわざ、山芋を買いにスーパーまで行かんでも大丈夫です。
ベーキングパウダーがあれば、それを使ったらええんです。
ベーキングパウダーと山芋が無かったとしても、意外と、食べられる物になります。
その時に家に在る物で、その時の都合に併せて自由に作れるからこその、王道」


・失敗を繰り返して、数をこなして、カンとコツを身体で覚える。
「焦げても良いんです。生焼けやったら電子レンジでチンしたら良いんです。
べちゃッと形が崩れても、ちゃんと火ィさえ通ってたら食べられます。
市販のソースとマヨネーズ、それに薬味の青海苔や鰹節で、大体の味が収まります。
……後は、自分が納得できるまで、数をこなす中で工夫をすれば良いんです。」


そして、家庭料理がプロを超える上での、最大のコツ。


・調理の前後の全工程を含めて、総合的に、楽しむ。
「買い物に行ったり、粉を混ぜたり、材料を切ったり。
それで食卓を囲んで、皆で食べて、食べ終わった後の片付けも手伝って。
……その、一連の時間の流れって、家庭料理だからこそ味わえる醍醐味でしょう?
……それこそが『プロを超える家庭の味』の秘密やと、僕は思うんですよ。


「牛(ギュー)じゃなくて豚(トン)とか、しょーもない事を言いながら。(笑)」
「そうした、何気ない過程の一つ一つの大切さこそ、家庭の味の秘訣なんですね」


今まで、色々と『関西風お好み焼き』のレシピについて調べましたケド。
コレほど説得力の深いレシピは、なるほど、初めて見た気がしまス。


積年、お好み焼きに関して、ボクが言下に抱いていた、素朴な疑問。
『どうして、レシピによって、ベーキングパウダーを使ったり使わなかったりするんだろう?』
……今回、その謎も、何気に解明されました。


お好み焼き……、って、やっぱり、奥が深い料理ですね。
もっとも、今回のレシピのベースとなる哲学ってのは。
ホットケーキやプリン、炒飯や餃子、酢豚やレバニラ、などなど。
全ての家庭料理に於いて、云えるコトなのかも知れませんケドね。