きらーびー…

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威嚇より先に
攻撃して来る気ッ!?



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いかくより
さきにこうげき
してくるき!?


変則定形律と見せかけて、スタンダードな定形固定律。
季語は『スズメバチ』、季節は「秋」。


いつぞ、ペナンガル(東南アジアの蜂の妖精)の夢を見た数日後に。
発情期のスズメバチに喧嘩を売られて、肝を冷やした武勇伝を書きましたが。
……武勇伝?(笑)


テレビの各種ワイドショーによると。
スズメバチは、攻撃する際に「カチカチ」とアゴを鳴らして威嚇音を発するそうで。
それが、身の危険を察知する、一つのヒントなる、……とか言ってますけれど。


実際問題、今の日本では、都市部だろうが山間森林部だろうが。
スズメバチの「カチカチ」の威嚇音なんぞ、絶対に聞こえないと思うワケで。
机の上でしか生態を知らない学者の、机上の空論を。
スタジオの中しか知らないキャスターが、鵜呑みで丸投げ紹介して。
……だから間違った知識が蔓延して、被害が増加の一途に繋がってる気がするですが。


ええ、実際に、スズメバチから身を守る術を知るためには。
まず、自分自身が襲われて、その危険性を本能に覚えさせる事だと思います。
……とか、それぐらい言わせしめるに至る実体験恐怖を、一度でも体験したら。
……あんな呑気な面で「怖いですねー」とか言っていられないと思うのですけれど。


基本。
ボクは、古畑任三朗警部補ヨロシク、始終、黒の服を好んで装着するので。
何か聞き捨てならないコトをシレッと書いた気がするけど、ツッコミはシカト。(笑)
ともあれ、ハチの類とは、全面的に相性が悪いです。
タンポポと遊ぶミツバチ、古家を詮索するアシナガバチ、枯木に陣取るクマバチ。
とにかく、ハチの類は、どいつもこいつもボクの気配を察知すると寄って来ます。


……ィャ、まぁ。
……ド派手な服をシックに着こなす、おばちゃんの周りにも集りますが。(笑)
……スカート丈の短い女子高生や、ガチムチの男子高校生にも寄って来ますが。(笑)
……子供だろうが老齢だろうが、服色とは無関係に問答無用で近付いて来るワケですが。


土台、都市化と生物多様性の兼ね合いで。
タヌキ、クマ、イノシシ、ハチ、サル、カラス、ムカデ、などなど。
人間の通常生活圏に、場違いな生物が混在する機会も増えた世の中でして。
ヘビみたいな嫌われ者から、アザラシみたいな人気者まで。
危害の有無まで冷静に考えて、四六時中、行動に注意を払い続けていたら。
それこそ、自宅警備員ニート探偵でも動物ノイローゼになるだろう、と。(笑)


余程のコトが無い限り、都市でハチと曹禺した場合。
刺されないコトを祈りつつ、小さい挙動でスルーするのが得策らしいワケで。
例えば、自分の手足の稼動範囲内に、ハチが飛び回っていたとしても。
「コイツは偵察隊で、攻撃意思の無いチキン」と信じて見ないフリをする、とか。
結局、実生活では、それぐらいしか出来ないのが実状なのですが。


『余程のコトが無い限り』。


先日、散歩の途中、いつも通っている道の小脇の電信柱に。
コレ見よがしに、三匹ほどのスズメバチが徘徊してました。
「視界内に、同時に、三匹のハチを捕捉する」なぞ、初めての体験で。
脳が考えるより先に、足が、動きを止めました。


待つこと、しばし。


背後の死角から、一匹のハチが、頬をカスって眼前に立ち。
ジッ、……と、ボクにメンチを斬って、喧嘩を売って来ました。
ええ、もう。
側を走り抜けたバイクのエンジン音より、ハチの羽音の方が大きい。
それぐらい、肉薄した距離で。
二秒もあれば、ボクの皮膚に毒針が突き刺さる、……ぐらいの射程距離で。


無意識に、数歩、静かに後ろに下がる。
ハチは、同一距離を保ったまま、メンチを斬り続ける。
ハチからは目を逸らさず、息を止めたまま、後退を続ける。
ある地点で停止し、上下動ホバリングを続ける、ハチ。


電信柱に集まっていたハチの数は、いつしか、十匹ぐらいになってました。
その中の一匹が、数メートル上空から、ボクの頭上に近付いてきて。
これ見るよがしに旋回を繰り返しては、髪の毛に触れるか否かの距離まで降下して。
その間に、ボクにメンチを斬っていたハチは、忽然と、姿と気配を消してました。


それから、帰路。
上空には、ずっと、後から来た増援の一匹が、ボクの上空を旋回していて。
時々、毒針の射程外ながらも羽音が聞こえる距離にまで降下して。
その攻防が、件の電柱から離れても3分ぐらい、続きました。


初めて、知った。
「偵察隊」と「攻撃隊」の業種の区分による、ハチの性能差。


スズメバチなのか、アシナガバチなのか、知りませんが。
少なくとも、致死毒を持つと危惧されている種類に近い、危険なハチだと思います。
「偵察隊」が警鐘を鳴らして、巣から侵入者を追い出す性質は知ってましたが。
「攻撃隊」が巣を防衛するために、攻撃意思を明示したのは、初めての体験。


カチカチ、って、テレビで紹介されていた威嚇音が、聞こえなかったけど。
明らかに「攻撃隊」は、飛空時の羽音が異なっていた。
なんつーか、殺気に聞こえた、……と、言うか。
即座に皮膚に張り付いて毒針を刺す用意があろう、実戦的な攻撃準備音。
無駄な動きが一切、無い。
だからこそ、より、鮮明に聞こえるのであろう、飛空音の羽音。
(「偵察隊」は、無駄な動きを加味して、より大きな羽音を出そうとする)
(そうする事によって、ハチのテリトリーの存在を知らしめようとしてるのか)


高原馬頭子、または、栗原渚、など。
昆虫のスペシャリストに依頼して、アレが何なのか解析して欲しいと願うほど。
今までとは、まったく次元が異なる、恐怖でした。


ボクの過剰反応なのかも知れませんケドね。
自然が相手の場合、警戒の度が過ぎて怪我をするって事は無いですし。
もはや、過去の経験に基づいた都合と想定は、通用しない時代ですし。
アレが、ボクとハチの互いの生存本能の無意識による、一進一退の攻防なのだとしたら。
生存戦略、しましょうか」なんて呑気なコトは、とても言っていられない。