いけだかずま…

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首と手に
ドクロを付けた
孝行息子


……字あまり。


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エヴァンゲリオンって作品は、兎角、歴史が長いので。
褒めるにしても、貶すにしても、立場が難しく。
信者を問わず、アンチを問わず、賛否共々、迂闊なコトを書くと。
未だ、炎上の危惧が懸念される、ある種の地雷なのですが。
……具体的には。
上記、「地雷」を「N2爆雷」とか、小ネタを差し挟むタイミングも難しいぐらいの。


個人的には。
テレビアニメ1クールを、期間中の納期で収拾できなかった。
(否。結論を劇場版に引き継ぐ手法は、昭和の頃から通用する一つの流儀)
(一例として『機動戦士ガンダム』→『逆襲のシャア』みたいに)
以後、一大ヒット作の大看板に胡坐を掻いて、そのネームバリューに依存。
……そんな半端者を、世の人々は「神」と崇めているんだなー、とか。
……全裸で闊歩する王様を万歳三唱で迎える市民を、傍で見ている子供の感覚です。


「どうして王様は、ハダカで町を歩いているの?」
「どうして庵野監督は、いつまでもいつまでも、エヴァばっかり作ってるの?」


十余年の歳月を費やして、未だ、作品として納得の完結ができない。
それは。
神域に立つ者だからこそ永劫に苦しむ、終わらせる難しさ?
無能だからオチの収拾が付けられない、監督としての無能と、身に余る栄光の枷?


逆に言えば。
一つの神作が、その実力と知名度に見合わぬ過剰な称賛を受けてしまい。
その後、監督としての人格より、過去の作品ばかりが注視着目されてしまう、不遇。
世は、「庵野秀明」一個人を全否定して『エヴァ』を必要としている。


エヴァ』には基本的に熱意の無い、感性が平坦なボクの眼には。
世論の一部が、庵野監督を生神の一人として崇拝する理由が、どうにも分かりません。


正直。
アニメ監督としての才覚と、人望と、技量は。


かつて『機動戦士ガンダム』で、似た様な轍を歩き。
結局、数年も後になって『逆襲のシャア』で一応のオトシマエを付けた、って意味で。
以後、意に反して、露骨な「ガンダム便乗作品」が世に溢れた不遇も加味して。
ガンダム、って名前が付いてるだけで、初代ガンダムには何の関心も無い続編群)


庵野秀明さん、は、富野由悠季さんと、互角、……にしか見えない次第。
年功序列の慣習で、富野氏の方が、やや、上に見られてる……ってだけで。


土台。
アニメ監督に限らず、芸術系の仕事ってのは。
年齢なんざ、まったく、何の判断基準にもならないのですけれど。


エヴァ劇場版・破>


思ったよりも、新参のメガネの人がカッコイイので、驚いた。
Pixivや何かで描かれてる通りの、絵面に見合う、鋭角的な気ッ風。
やっぱり、実物を見ないと、魅力ってのは分からないモノだなぁ、……と。
その一点、深く、深く、反省。


そして、とても、心に響いた演出。


ミサトと父の確執を、加持が、シンジに語るシーン。
シンジも、また、ミサトとは別角度で父との確執を抱く経緯もあり。
その『父との確執』(家族の在り方のシンパシー)を、小さく実感する場面。


……そこで流れていた、BGMが。
彼氏彼女の事情』で使われていた「一期一会」だった、のが。


個人的に、すげぇ、……と、思いました。
こんな深い部分で、微に入り、細に渡り、こだわって作られているのか、この映画。


補足。
彼氏彼女の事情』で使われていたBGM、「一期一会」。


父一人、娘一人。
片親の孤独に寂しさを感じつつ、健気に気丈な愛娘、芝姫つばさ。
母一人、息子一人。
寂しさを感じるヒマも無いほど家庭的な孝行息子、池田一馬。


そんな二人が。
つばさ、の、たった一人の父、……が。
一馬、の、たった一人の母、……と。
再婚するとか、しないとか……って、段になって。


どうにも、父の再婚を認める気になれない、つばさ、を。
(母のいない寂涼を娘として支えて来た過去を、否定されている錯覚に陥って)
母の再婚を推奨する一馬が、池田宅に連れ込んで、説得するシーン。


「ただいま」とドアを開けても、誰もいない池田宅。
片親一子、ゆえに家事も侭ならない状況に、右往左往する一馬。
つばさを待たせて雑多な家事を、一頻り、手際良く片付ける一馬の姿を見て。
片親の一馬が、片親の自分と、同じコトをやっている、……と。
つばさが、一馬の本質的孤独に気付く場面。


つばさ「帰宅した時、ドアを開けても、誰もいない」
一馬 「その『独りぼっち』の寂しさを、僕らは知っている」
つばさ「同じだね」
一馬 「うん。同じだ」
つばさ「……じゃあ、私たちは最初から姉弟みたいな物だったんだ」
一馬 「そう。そして、これからは『独りぼっち』じゃない」
つばさ「家族だから?」
一馬 「家族だから。」


夏の夕暮れ、ヒグラシが啼く中で。
淡々と心を重ねて『独りぼっち』では無い心地良さに慰められる、片親一子の二人。
家族の在り方のシンパシー。


その背後で、流れていたBGMが、上記の「一期一会」。


他にも、随所で、こっそりと『彼氏彼女の事情』のBGMが流れていて。
なるほど、エヴァ中盤戦の、男女の複雑な機微を演出する上で。
味のある演出をしてくれるモノだ、と、ちょっとだけ溜飲が下がる想いもヒトシオ。