うさぎどろっぷ…

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結論は
りんと大吉の
夫婦道


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なんて壮大な『光源氏』計画。
葵の君、……でしたっけ。
父として、娘として。
物心付かぬ幼少の砌から、生活距離を、公然と肉薄しつつ。
いずれ、夫婦となる暗黙の未来像を、その子に刷り込む洗脳手法。


もとい。


正等な血縁のある、父、母、子。
(決して、「正統」と履き違えないで下さい。)


それだけが、家族の典型として社会に定着する核家族社会。
しかし、実際には。
養子やら、再婚やら、死別やら、血縁なんぞ仮初の「絆」の一つに過ぎず。
観念論はさて置いて、事実論だけを厳然と見れば。
血縁の檻の中で、子が親を、親が子を、『殺す』。
そんな異様で凄惨な病理が、日常化してしまっている、不穏な時代。


そんな、人間心理の破綻に触発されて。
「血縁の無い家族が紡ぐドラマツルギーの美学」、……ってのは。
往々、度々、売分屋の作品のネタとして、珍重されているワケですが。
現実。
家族の安泰を、永劫、守り続ける上で、血縁には何の意味も無いワケで。


無論。
自分の血縁を重んじ、分かる範囲の先祖を大切に尊輩する事は、大切です。
(祖父母から聞かされた、祖父母の祖父母や、祖父母の親の話、……など)
しかし、一方で。
「父も、母も、結局は他人である」とする割り切りを、思春期以後に自学して、後。
他人だからこそ、血縁に寄らず、大切にするべき存在なのだ、……と。
青春期から大人になるに至り、誰に諭されるでも無く、自学できるか、否か。
……そこが、家族の幸福の、原点だと思う次第。


あるいは、それが、ただの友達であり。
あるいは、その友達の中に、特別な意味を持つ異性が出現して。
あるいは、性交を通じて血縁を成し、名実、正等な「家族」となり。
あるいは、その男女二人の間に、その確証たる子供が生まれて。


そのプロセスに置いて、恋愛的な好意の微細な差は、あろうとも。
人間愛の意味では、差があってはならない、と、思います。
我が子も、友達も、嫁も旦那も、父母も。
人が人を愛する多様性は、決して、近似値的にパターン化できるモノでは無い。


うさぎドロップ


なんだか、実写でも、ヤるそうです。
芦田愛菜ちゃんがどーこー、以外の話を、一向に聞かないのですけれど。


なんつーか。
ボクは、安達祐実ちゃん(子役時代)の「『グ』が大きい」を知る世代なので。
「同情するなら金をくれっ!」を、現役で見ていた世代なので。
天才子役とチヤホヤされて後、大人になって、女優として無視されるに至る敬意を。
一視聴者の視点で、マスコミの対応の過熱と急冷を見ていたので。


芦田愛菜ちゃん、も。
二十歳を超えたら、才能の有無なぞ、まったく無視されるのかなー、……とか。
せいぜい、結婚とか、離婚とか、出産とか、そんな折に話題になる程度。
女優としての「誇り」や「人格」など、もう、誰も興味が無くなったりして、さ。


その未来予想を逆算して考えたら。
今、天才子役としてチヤホヤしている、世の中のヲトナを見ていると。
二十歳を超えて「愛」を知らぬ大人の群れに、ゾッと背筋が凍ります。


心身、万感万事に恵まれて満ち溢れた、芦田愛菜ちゃん、が。
先天的に、もっとも「必要な物」を欠損した、鹿賀りん、を。
『すべてを持つ物』が、『何も持たざる物』を。
どう演じるのか、非情に興味のある部分でもありますけれど。


そりゃ、天才子役っても六歳児なので、何を期待するでも無いワケで。
結局、わざとらしい演技になるのは、ご愛嬌。(笑)
そんな部分を「役者として成ってない」と酷評するのは、それこそ、バカです。
ええ、それも踏まえて、バカになってみるのも楽しいかな、……と。
真人間として普通に「愛菜ちゃんカワイイなー」とか。
オタクの偏屈で「りんハァハァ」とか。
好意的に見るか、否定的に見るか、それは分かりませんけれど。


ともあれ。


この作品を見た人々の、感想が。
結局。
愛菜ちゃんが可愛いかった」の一語に集約されるのだとしたら。
なんつーか。
ダメじゃん、…………と。


うさぎドロップ』が、ダメ、なのでは無く。
芦田愛菜ちゃんが、ダメ、なのでは無く。
家族の在り方を考える気の無い、心の麻痺した人々が、世に溢れている現状が。
ダメじゃん、…………と。


この作品、りんは高校生に成長して、第二期が始まるらしいのですが。
もし、第二期の高校生編も、映画化される、……として。
高校生の鹿賀りん、を、前田敦子さんが演じる、……のだとしたら。


ボクは。
実写版の映画監督は。
うさぎドロップ』を、全否定しているのだと受け捉えます。


作品なんか、どーでも良い。
映画監督として、俺すげー。
世に対して、そう言いたいのだ、……と、確信します。


まぁ、シビアな物言いのフォローに慌てるのも、アレですが。
日本の家族1000組を、無作為に選出した場合。
血縁の有無や、構成や、地域に寄らず。
少なくとも98%、場合によっては100%、の、家族が。
「今の家族である事を幸福に思う」と、純真に、回答するでしょう。
本意で。
真意で。
真心で。


今日、ボクがナナメに見下すほど、日本の『家族』は、崩壊していない。
その点(平成の、家族観の崩壊の危惧)については。
過辣な発言を取り下げて、暴言を謝罪します。


まぁ。
『うそぎドロップ』が『源氏物語』に類する、ドロドロの近親恋愛である点、は。
(ただし血縁が無いので「父と娘が夫婦道を歩む」点に、社会的問題点は、無い。)
(道義人道的な問題点に関する議論は、それを専門としている場所で、どうぞ)
なんつーか。
言いたいコトが山ほどあるけれど、まとまらないので無言に臥す次第。


ただ。
そんなドロドロの近親愛の仮想世界に、現実を生きる六歳の子供を巻き込むな。