ですてぃにー…

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ハチミツと
林檎が決め手
カレーの日


『そして華麗に
私を食べて』


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前説。
荻野目林檎は、始終、ある日記帳を大切に持ち歩いているワケですが。
その日記帳には、過去では無く、未来が書き綴られていて。
その日記帳に書かれた内容を、未来を、堅実に実行するのが彼女のデスティニー。


輪るピングドラム


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第三話。


そんな荻野目林檎には、意中のオトコ(田渕先生)が居るワケでして。
田渕先生のために、カレーを作って持って行くワケなのですが。
その日、田渕先生の家から姿を現したのは、見知らぬ一人のオンナ。
荻野目林檎の都合と事情を知ってか、知らずか。
田渕先生が帰宅するまでの間に、台所で、カレーを煮詰めていたワケで。


そりゃ、荻野目林檎としては、気まずいワケですが。
日記には「田渕クンはカレーを美味しいと言ってくれた」と書かれてあるので。
是が非でも、林檎のカレーを食べさせなければならないデスティニー。
一瞬のスキを突き、見知らぬオンナのカレーと、林檎の自作カレーを鍋ごと摩り換えて。
そのまま、荻野目林檎は、田渕邸から遁走するワケなのですが。
今頃、田渕先生は、見ず知らずのオンナと林檎のカレーを食べてるのかなー、とか。
陰鬱な気分と、日記を堅実に実行できた達成感と、何とも複雑な面持ち。


……、で。
第三話のサブタイトルテロップが表示されて、エンディング。


サブタイトル『そして華麗に私を食べて』。


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第四話。


田渕先生と野鳥観察デート、……の、ハズが。
一緒に現れた、件の「見知らぬオンナ」。
いわく、彼女の職業は、いわゆる『宝塚の女役(仮)』とかで。
王子(田渕先生)、姫(見知らぬ女)、間女(林檎)の脳内配役で。
手前勝手に『宝塚』な妄想を繰り広げつつ、王子を自分のモノにしようと奮闘躍起。
林檎の脳内では、林檎の配役は、むしろ「間女」では無く、林檎こそが「姫」。


「午後四時。公園の池のほとりで初めてのキス♪」。
それまでのデスティニーが、ことごとく、裏目裏目の失敗で。
いっそ、池で溺れて人口呼吸を乞う、……と言った、大技で。
どうにか、日記帳どおりのデスティニーを、今日も堅実に実行したワケですが。


その日記の末尾、意味も無く、書き綴られたP.S。
「午後九時。赤い靴の女の子、落ちる」。
ちょうど、その頃。
赤い靴を履いた女性が、エスカレーターから突き落とされる事件が発生して……。
サブタイトルのテロップが表示されて、エンディング。


サブタイトル『舞い落ちる姫君』。


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なんつーか。
登場人物の数と相関関係が『シュタインズゲート』より単純なのに。
個人的には『ピングドラム』の方が、ストーリー性が「深い」様な気がします。
例えるなら。
一話一話は、いつも通りの長さ、……なのに。
全体的に二時間ドラマとして一本のストーリーが繋がってる『世にも奇妙な物語』特別編。
……みたいな感じの、緻密なドラマツルギー


てんでバラバラに散らかった仕掛けが、最後の最後に一つの結論に到達する。
ピングドラムって、ピタゴラスイッチに類する哲学機構なんじゃないかしら、と。(笑)
シュタインズゲート』共々、『ピングドラム』も。
どちらも、見ている間は、右脳の方が機敏に作用するのですが。


シュタインズゲート』は、右脳でアプローチを受けて、左脳で結論を出す感じ。
(数理的な時間軸の移動を文脈整頓して、齎された現状を文系的に把握する感覚)


ピングドラム』は、左脳でアプローチを受けて、右脳で結論を出す感じ。
(バラバラの文学的な伏線を、破綻無く結論へと導くために数学的に把握する感覚)


なるほど。
たかがアニメを見るのに、コレだけ頭を酷使するってのも、面白い。