せんぷうき…

   ※   ※   ※   ※   ※   ※   


クールビズ
慣れぬアロハに
冷たい眼


   ※   ※   ※   ※   ※   ※   


扇風機が、チマタで、ちょっとした大人気になっています。
確かに、クーラーと比較して、省エネルギーで、エコロジーです。
その有用性と有為性は、十年以上も前から注視着目されていたワケで。
その真価が、今、ようやっと、再評価される運びと相成った次第。


ただし。
その「再評価」のトリガーとなったのは、一連の原子力事故、……で。
それに起因する、未曾有の電力不足への危機感と懸念に端を発するワケで。
どちらかと云うと、ネガティブなモチベーションが作用していたりもしますが。


まぁ、ポジティブであれ、ネガティブであれ。
結果論として、節電とか、エコとか、良い方向へと時代が流れるのであれば。
それはそれで、結果オーライって事なのでしょう。


ですけれど。
ボクは、二十余年ほど、夏は扇風機で過ごして来たレトロな人間なのですが。
(ボクの場合は、節電やエコでは無く、個人的な酔狂と趣味による)
自今の扇風機ブームを始めとした、「省エネな夏の準備」を見ていて。
フッ、……と、感じるコトなのですが。


『節電の夏』を、メディアが騒ぎ始めたのが、四月の下旬。
それに踊らされて、世の人々が『節電の夏』に興味を示したのが、五月。
その興味の火種は、様々なにカタチで、波紋状に広がりを見せつつあり。
未曾有の扇風機ブーム、も、その一環なのですが。


今は、最高気温 25度 前後で、扇風機で過ごすには、ちょうど良い時季です。


……、が。
テレビや雑誌で、その気になって、扇風機ブームに乗っかったミーハーの人々は。
最高気温 36度 の猛暑を、扇風機で、どうやって切り抜けるのかなぁ、……と。


ィャ、違う。


扇風機の密かな回帰(クーラー至上主義に対する反骨)は、十年くらい前から謳われました。
ボクの周囲でも、超長期スパンで、扇風機を活用している知人は多いです。
あるいは、エコや節電により。
あるいは、個人的な酔狂や趣味により。
あるいは、なんとなく。
理由は、個々、どうであれ。


逆に云えば。
その十年間、クーラーに甘えて、機械的に『涼しい夏』にカマけていた人々は。
どうして原子力発電所の事故が起こるまで、扇風機を軽視していたのかなぁ、と。
十年ほど前から「クーラーよりも扇風機の方が良い」とされる諸説が、飛び交っていたのに。
どうして、去年の夏までは、まだ原子力発電が安全だった頃には、クーラーを使っていたのか。


極論、『エコロジー』ってのは。
その大前提として、「永続可能な状態を継続するコト」です。
原子力発電の未来が、原子力に代わる新時代エネルギーが、どうであれ。
少なくとも、アナタが死ぬまで、今後一生。
理想論としては、アナタの子供や、孫や、その先の未来も。
「永続可能な状態を継続するコト」が『エコロジー』です。


厳密には。
LEDやリチウムイオン充電池も、寿命がある以上『エコロジー』では無いワケで。
消耗および廃棄のサイクルが、蛍光灯やアルカリ乾電池よりも長いから。
エコロジー、……と宣伝しても語弊が無いほどの超長期間」であって。
決して、『(永遠に近いサイクルで、その状態が継続される)エコロジー』では無いワケで。


詰まる所。
最高気温 36度 の猛暑を、扇風機で過ごす、夏を。
最低気温 6度 の極寒を、電気毛布で過ごす、冬を。
今後、十年以上、二十年以上、延々と続ける心積もりがあるのかなー、と。


自今の「エコロジー」って単語の安売り感を見ていて、フッと考えたりします。
今、空前の「エコ(節電・省エネ)ブーム」の時だけ、売れれば良い。
今、空前の「エコ(節電・省エネ)ブーム」の時だからこそ、売りまくりたい。
そんな感じの、日本人の悪癖っぽい、ただの便乗商法にしか見えません。
売るヒトも、買うヒトも。


本当に、『エコロジー』を考えてます、……と胸を張るのであれば。
そもそも、扇風機では無く、団扇で夏を過ごすのが、スジのです。
人力。
一切の電気を消費しない究極の自然エネルギー、完全節電。
そこまで、虚端に考えを突き詰める学問が『エコロジー』です。
そこまで、極端に実践する学問が『エコロジー』です。


とか、ね。
そこまで考えてるのかなー、……って。
「エコ」を、ただの宣伝文句としてしか考えていない、平成日本の産業市場は。


常々、思うのは。
市場のそこかしこに見られる「エコ」の二文字が示唆する真意、は。
地球の未来を真剣に考えた『エコロジー』では無く。
自社の利益を真剣に考えた『エコノミー』ですよね、とか。


悪いコトでは無いですよ、『エコノミー』社会も。
結果論として、地球環境が是正されるのであれば、それは立派な『エコロジー』です。
『エコノミー』 = 『エコロジー』 = 「エコ」は、矛盾も無く平行成立します。
……、が。
そこまで考えた上での「エコ」の二文字なのかしら、と。


「エコ」って付ければ、商品が売れる。
その程度のコトしか考えてない『エコノミー』でしか無い。
そんな風に見えたりもする、近年の「エコ」ブーム。