なつひばち…

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夏火鉢
程よく爆ぜる
ウナギの脂


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字あまり。
ちなみに、夏火鉢ってのは「無駄な行動」を意味する慣用句でもありまス。
いわゆる、夏炉冬扇。
もしくは。
月夜に提灯を焚く、今日は、そんな話。


あるいは。
言葉だけでは、世の中の「道理」は説明が難しい、そんな話。


「月夜に提灯」。
「月光が闇を裂く明るい夜には、提灯なんか焚く必要は無いぞ」みたいな。


必要も無いのに、わざわざ手間と浪費を強いるヒトを嘲笑した諺なのか。
(落語に於けるマヌケ噺の「笑い」の肴、と、云う意味で)
それとも。
江戸時代より旧来から、日本人は、殊、エコに厳しい民族だったのか。(笑)


何にしても。
日本のみならず、そもそも満月の夜ってのは、それなりに明るいワケでして。
提灯や行灯が無くても通行人の顔が見える、ぐらいの明度だったりしまス。


…、が。
現代に於ける月夜に於いて。
自動車や自転車やバイクの走行には、前照灯の灯火が義務付けられています。


パッと言われたら「で?」って話なのですが。
よくよく考えたら。
不思議、……ですよね?


月夜に提灯を焚く風習を稀有に思っていた民族の子孫が。
月夜にヘッドライトの灯火を義務付ける。


「月夜に提灯」。
提灯の灯より、ヘッドライトの方が、光量が大きいコトは言わずもがな。
提灯の灯を焚く行為にさえ、疑問を抱いていた滑稽の、ずっと未来の、今。
都市部だと、それこそ、曇天の真昼より明るい場所もあるぐらいなのに。
より明々と、夜道を照らすコトを、むしろ推奨しているワケですから。


「月夜に提灯なんか、いらないよ」って話だったのが。
「月夜だろうと提灯を付けて、事故防止を心掛けましょう」、と。


ほら、ね?
いつの間にか、ニュアンスの逆転現象が起こっているコトに。
世の人々は、この、意味の本質の歴史的な大ドンデン返しに、無関心で。
国語の教科書や、諺の字典には、「月夜に提灯 = 不必要」として示唆されているのです。


夏炉冬扇、……の、話。
一見すれば、落語じみた滑稽な行為が、実は理に適った行動であるコトを示す一例。


ィャ、まぁ。
地鶏の屋台とか鰻屋とか、冬でもバタバタと団扇(扇)で風を送り続ける例もあり。
鉄鋼産業や原子炉など、夏でも轟然と『ARIA』のサラマンダーみたいな仕事をしてる例もあり。
……今は、そうした例外は無視して、普通の生活に於いての話。


夏のストーブや炬燵(炉)、冬のクーラー(扇)。


うにうに。さんは、年中、ゲームボーイミクロを使う時には軍手を常備します。


最高気温 6 度の真冬日の時も。
最高気温 36 度の真夏日の時も。
……ええ、もう一度、書きます。
最高気温 36 度の真夏日の時も。


真夏に軍手を嵌めて、ゲームボーイミクロ
なんだって、また、そんな素っ頓狂なコトをするのか。


手垢や手汗による、汚れの付着を予防するためです。


……ええ、まぁ。
……月夜に前照灯、の話と比較したら、随分とバカげた話ですけれど。(笑)
……「どんだけ神経質なゲームハードマニアたよw」、とかね。


それでも。
月夜の前照灯のマクラの後に、こうした、ボクの奇行を説明すると。
屁理屈なりにも、妙な、説得力がありませんか?


一見、他人からしてみれば、無駄とも奇行とも思える素っ頓狂な行動が。
冷静に見ると、理に適った平常の動作である場合がある。


夏炉冬扇。
最近では、夏のオフィスでも、腰に懐炉(カイロ)を貼るヒトも居たりするワケで。
湯上がりの火照った身体を心地良く冷やすため、冬でも扇風機を回すヒトだって居ますし。


すべて、人々の行動には、そのヒトなりの理由があるのよさ、……と。


冒頭の句、補足。


ちなみに、件の、夏火鉢のオトコ。
なんだって、七輪では無く、火鉢に網を敷いてウナギなぞ焼いているのか。
七輪を探すのが面倒だったから、火鉢を持って来たってだけのオチ。(笑)
……なんだかんだ言っても、やっぱり無駄や不精に起因する例も多い、ってな結論です。